アブデラの看護理論

フェイ・グレン・アブデラ
(1919-)
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年表

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1950年代の看護実践および看護教育は、テクノロジーの進歩と社会に変化がもたらした大きな問題に直面していた。また、第二次世界大戦をきっかけに看護の定義も混乱してきた。

「看護とは何か」が大きな課題となり、これが、専門職看護を確立しようという看護界の顔貌と重なって専門職看護とは、准医師であったり、直接的なケアより管理や教育に携わるものとする見解が表れた。

 結局、この時代の人間社会が個人の存在、自由を尊重する傾向があり、看護再発見の土壌を創り出した。


アブデラは、看護を次のように定義している。

 (看護は)個人と家族に対するサービスであり、ひいては、社会に対するサービスである。
 看護は、個々の看護婦の態度、知的能力、および技能を形成することにより、病気・健康を問わず、人々が自分自身の健康上のニードに対処できるように援助したいと思う気持ち、およびその援助に必要な能力を生みだすアートとサイエンスの上に築かれている。
 
 看護は一般的な、あるいは特定の医学的方針に沿って行われることもある。

 このようにアブデラは、親切で愛情深いだけではなく、知識にあふれ、有能で、確かな技術を備え、患者にサービスを提供する、という看護婦像を描いている。

 アブデラの著書における第二の主要概念は看護問題である。ここでいう看護問題とは患者ケアにおける看護婦の役割を明確にするために用いるものである。

患者がもたらす看護問題とは、患者あるいは家族が直面している状態であり、看護婦は専門的機能を働かせることにより、彼らがそれに対処できるよう援助できる。

 問題には顕在的なものと潜在的なものがあると述べている。 アブデラは患者中心のアプローチを打ち出しているが、問題を明確化して解決するのは看護婦であると考えている。そこで問題を明確化して分類したものが、21の看護問題として提示されたものである。





21の看護問題

 この21の看護問題は大きく三つの要素から構成されている。
その三つの要素とは
 ①患者の身体的・社会的・情緒的ニード
 ②看護婦と患者の間の対人関係のタイプ
 ③患者ケアに共通の要素

 21の看護問題とは

  1)適切な衛生状態および身体的安楽を維持する。

  2)最適な活動を推し進める:運動、休息、睡眠

  3)事故、傷害、その他の外傷、および感染の予防を通じて、安全を促進する。

  4)適切なボディ・メカニクスを保ち、身体の変形を予防矯正する。

  5)身体の各細胞への酸素供給の維持をはかる。

  6)身体の各細胞への栄養供給の維持をはかる

  7)排泄機能の維持をはかる。

  8)体液・電解質バランスの維持をはかる

  9)疾患によってひきおこされる諸状態に対して、身体が示す生理的反応を理解する。

  
 病理的・生理的・代償的反応

  10)身体の調整機構および機能の維持をはかる。

  11)感覚機能の維持をはかる。

  12)肯定的および否定的な表現、感情、反応を明らかにし、受け入れる。

  13)情緒と器質的疾患の相互関係性を明らかにし、受け入れる。

  14)効果的な言語的・非言語的コミュニケーションの維持をはかる。

  15)生産的な対人関係の発展を促す。

  16)個人の精神的目標を達成する。

  17)治療的環境をつくり出す、そして/または、それを維持する。

  18)さまざまな身体的・情緒的・発達的ニードをもつ人間としての自己への認識を高める。

  19)身体的・情緒的制約のなかで、最大限可能な目標を受け入れる。

  20)病気から生じる諸問題を解決する助けとして、コミュニティの資源を活用する。

  21)病気の発生に影響を及ぼす因子として、社会的問題の役割を理解する。

そして、アブデラの著書における第三の主要な概念は問題解決である。

 問題解決とは「顕在的あるいは潜在的な看護問題を明確化して解釈・分析し、それらを解決するため の適切な方策を選択する過程」である。看護婦は最良の専門的看護ケアを提供するために問題解決能力を持たなくてはならない、とアブデラは述べている。

 問題解決の過程は、看護過程の諸段階と相通じる物があり、問題の明確化、データの選択、仮説の立案・検証・修正、という手続きからなっている。アブデラは問題解決の過程が適切に展開されないと、患者は質の高い看護ケアを受けることが出来ない、と述べている。

 看護は、援助を専門とする職業である。アブデラのモデルでは、看護ケアとは、対象者のニードの充足、自助能力の回復、障害の軽減を目標として、その人に対して、あるいはその人に代わって何らかの行為を行なったり、その人に情報を提供することである、とされている。

 方略としてどのような看護ケアを用いるかは、問題解決方法に即して決定される。看護過程は問題解決過程であり、看護問題を正確に明確化することが最も重要である。

 アブデラは患者中心のアプローチを打ち出しているが、問題を明確化して解決するのは看護婦であると考えている。つまり、アブデラの研究の焦点は患者自体ではなかった。アブデラは人々が経験している問題を看護婦が明確化し、看護婦がその明確化した問題の緩和をはかることによって、援助の過程が進行すると考えている。

Keywords

  1. ニード
  2. 患者中心の看護
  3. 21の看護問題
  4. 看護はテクノロジー
  5. 問題解決策

看護の定義

◆人間とは

 フェイ・グレン・アブデラは、身体的・情緒的・社会的ニードをもつものと捉えている。これらのニードは、多くは身体的ニードである顕在的なものと、情緒的・社会的ニードのような潜在的なものがある。

 顕在的ニードは、直接観察することによって、比較的容易に捉えることができる。しかし、潜在的ニードを把握するには、熟練したコミュニケーション技能および患者との相互作用展開能力が必要である。また、人間はすべて自助と学習能力を持ち、個々の問題を解決することによって健康な状態、あるいは自力で対処できる状態に回復するものである。

 =STEPUP=

 ナイチンゲールとの相違点・類似点
  ナイチンゲールが身体と心に重点をおいて定義付けたのに対し、アブデラはニードに重点をおいた点が2人の相違点です。ナイチンゲールでは身体、アブデラでは顕在的なものというように目で見てわかるものと、前者では心、後者では潜在的なものというように目で見てわからないものの両方を人間が兼ね備えていると考える点は両者の類似点である。

◆健康とは

 アブデラが<患者中心の看護>で論じているところによれば、「健康とは、病気と相反する状態である。健康とは個人が満たされていないニードを持たず、実存するあるいは予測される障害はない状態」という定義が暗黙のうちになされていたが、それから30年が経過した今日、アブデラは「健康ー不健康という連続体の中で健康状態をとらえるべきことを強調したい」と述べている

 ナイチンゲールは健康とは体調がよく、われわれが持てる力を最高に発揮することであるとしている。さらに彼女は病気とは何らかの注意不足に対して自然が行動を開始した回復過程であるとみなした。ナイチンゲールは健康とは環境上の健康因子を手段に用いて、病気を予防しつつ維持する状態という像を心に描いていた。彼女はこれを健康を守る看護(Heaith Nursing)と呼び、本来の看護(nursing proper)と区別した。本来の看護とは、病気になった患者が再び元気になれるように(survive)あるいは、すくなくとも死ぬまでよりよく生きることができるようにすることが看護であった。

◆環境とは

 調査中

◆看護とは

 個人および家族、ひいては社会に対するサービス
これは、文理科学に基づく考え方で、そこでは個々のナースの姿勢、知的の能力および技術が人々の健康上のニーズの充足を助けるための願望や能力として表れる。
 重要なのは、看護婦が専門職看護の基礎を習得する一方で、”患者中心の看護の考え方”に基いて専門領域に熟練することである。
 これには、患者(クライアント)の健康上の問題を見つけ出すこと、適切な対処法を決定すること、個人の総合的な健康上のニーズに対する継続的ケアを提供すること、患者が心身の健康達成および維持を一人でできるように指導すること、および研究を行うことなどが含まれる。



アブデラとナイチンゲールの違い

 アブデラの定義する看護は、患者自身に直接的にケアを提供するといった、患者のニードを満たすこと、健康上のニードに関連した個々の問題を解決することだと捉えている。一方、ナイチンゲールの定義する看護は、患者が療養する周りの環境を整えるといった、患者に最適な条件を提供し、患者自身の自然治癒力を強めさせる。また、アブデラは看護を専門職と捉えているのに対し、ナイチンゲールはすべての女性は看護婦であることと捉えている。

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