包帯法
包帯(bandage)は創傷や疾病の治療のための、対象(患者)の身体に比較的長時間装着する衛生材料や器具です。治癒過程に作用するばかりでなく、対象の外見の印象にも影響を与えます。包帯を装着したままで生活動作を行い、外出も行う。このことからも、看護師は対象の苦痛を最小限にとどめ、外見上も整然とした包帯法(bandaging)を施す必要がある。
包帯の目的
種類 |
目的 |
備考 |
被覆包帯 |
創傷および表在性病変の保護 |
創部にあてた消毒ガーゼが動かないよう、絆創膏・巻軸帯・三角巾・腹帯・T字帯などを用いて固定する。 |
支持(保持)包帯 |
局所に貼付した薬剤や罨法材料がすれるのを防ぎ、局所の安静や保持をはかる |
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圧迫包帯 |
患部を圧迫して、止血したり、浮腫や腫脹の消退をはかる |
患部にはガーゼ・綿花などを厚くあて、布片や絆創膏などで強く圧迫する。弾性包帯がよく用いられる。 |
固定包帯 |
骨や関節の疾患時などに、身体の一部の運動を制限し、安静を保たせる 手術創が開くのを防ぐ |
ギプス 副子+布片 絆創膏 |
牽引包帯 |
外傷や疾病によって生じた組織の位置異常を引っ張って正常な位置にもどす。 |
骨疾患に用いられる。皮膚に密着させた絆創膏・布片あるいがギプスを牽引する。 |
矯正包帯 |
骨・筋疾患の変形を矯正する |
主に骨・筋疾患において用いられる。ギプス・コルセットなどが用いられる。 |
巻軸帯各部の名前

巻軸帯の幅と使用部位
名称 |
包帯幅 |
使用部位 |
2~3裂 |
15~10㎝ |
胸部、背部 |
4~6裂 |
7~5㎝ |
頭部、四肢 |
7~8裂 |
4~3㎝ |
指、 趾部 |
包帯使用時の原則と注意事項
1. 感染を予防する
① 創部には滅菌した材料を用い、固定のための包帯は常に清潔で乾燥したものを用いる。
② 血液や分泌物などで包帯が汚染された場合は、できるだけ早く交換する。無理に除去して組織を損傷しないように注意する。
③ 皮膚の2面が接触することを避ける。
2. 循環障害を予防する
① 包帯はどの部位にも平均した圧迫で、常に左から右へ帯頭をころがしながら皮膚に帯身を密着させて巻く(巻軸帯の場合)。
② 腕や脚に包帯をするときは、末梢部より中枢部へと巻き進む。これは下部の充血、浮腫を防ぐためである。
③ 末梢部、とくに指先など身体の末梢部は観察できるように残して巻く。末梢部に変化(皮膚の色、感覚異常、浮腫)があれば包帯を交換する。
④ 炎症や疼痛のある部位には圧力をかけないようにする。包帯は湿って伸びたり、乾燥して逆にちぢみ、組織を強く圧迫する危険もある。
3. 運動機能制限を少なくする
① 関節は機能的肢位を保てるように配慮して巻き、可能な限り関節運動の制限を少なくする。
② 必要以上の範囲まで巻かない。巻軸帯が余った場合には切るようにする。これは創傷部分に余分な熱を加えたり、圧迫が不均等になることを避けるためである。
4. 安楽を守る
① 患者の体位や姿勢は解剖学的に自然な位置を保ち、巻く部位を十分に支えながら巻く。
② 副木や当て物などを使用している場合はやわらかいもので覆いをし、強い圧迫が加わらないように注意する。
③ 包帯を巻いている間も巻き終わってからも、患者が気持ちよい状態であるかどうかをたずね、しまり過ぎないように注意する。
④ できるだけ外観を美しく巻き、巻き終わりの結び目やクリップ、絆創膏、安全ピンなどは損傷部位以外の位置にくるよう工夫する。
包帯の短歌
「きつすぎず ゆるすぎもせず かたちよく てばやくまいて おちぬほうたい」
【巻軸帯(けんじくたい)】の巻き方
~環行帯(かんこうたい)~
同一部位を環状に巻く巻き方。包帯を重ねて巻く。

螺旋帯(らせんたい)
先に巻いた包帯の幅の1/2~1/3を重ねながら巻く巻き方。

~蛇行帯(だこうたい)~
包帯を重ねずに巻軸帯の幅とほぼ等しい間隔を開けて巻く巻き方。シーネやガーゼの固定などに用いる。
~折転帯(せってんたい)~
重ねて折り返しながら巻く巻き方。前腕や下腿の太さに差がある部位に用いる。

~麦穂帯(ばくすいたい)~
8の字を書くように巻き、伸側で交差させる巻き方。肩関節、股関節、腋窩部、手首などに用いる。

~亀甲帯(きっこうたい)~
肘・膝関節などの屈伸するところに巻き、屈側で交差させる巻き方。
集合(求心)亀甲帯

離開(りかい)(遠心)亀甲帯
